有史以来の格差社会

 今、世界の格差は空前絶後有史以来の最大値を更新し続けている。
 なにせ、いまだに現金すらほとんど縁のない中世の農奴のような暮らしの人がいる一方、最新のテクノロジーと医療に守られ、飽食と財宝で満たされた生活をする富豪たちがいる。


 ちょっとまえまでそんなことはなかった。
 ラストエンペラー溥儀の兄弟はその半数が幼児期に死亡もしくは死産である。世界最高の権力者のひとりだった中華皇帝、愛新覚羅の一族ですらそんなもんだった。百姓たちの乳児死亡率と大差がない。彼はたくさんの財宝を持ち、広大な中国を支配してはいたが、現代医療とはかけ離れた医療しか受けることができなかった。
 腹がすいたからと言って、すぐに料理が食べられるわけでもなかったし、冷蔵庫にアイスは常備されていなかった。ないからといってコンビニへいくわけにもいかない。
 私たちは溥儀の家よりもはるかに狭い家に住んではいるし、中国大陸を支配してもいない。が、当時とはくらべものにならない医療、科学の恩恵にあずかっている。福祉制度は充実している。年金制度もある。戦争もない。紛争もない。明らかに私たち一部の人類は溥儀よりもずっとよい生活をしている。財宝はないが
 しかし、また一部の人類は彼の時代の農奴よりもずっと酷い暮らしをしている。少なくとも溥儀の農奴たちは科学物質に汚染された廃棄物の中で生活することはなかったし、アフリカのコーヒー農園のように生産作物のすべてをもっていかれることもなかった(重農主義的だった時代において、農民の数と国力はイコールだったから、減少はなるたけ避けられた。生かさぬよう殺さぬようがベストだったが、先進国のプランテーション会社は雇用した黒人が死んでも何も困らない)し、清の常備軍はせいぜい火縄銃だったので、一揆の一つも起こせたが、現代の国軍は戦車を持っていて、一揆のひとつも起こせやしない。