憂邦烈士連合会@ソロプレイ

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病気予防という考え

 中国人は早い段階から早期治療を重視してきた。

 それが結果的には外科医療の進歩を妨げ漢方に傾倒することになってしまうのだが、発想自体は非常に進んでいた
 西洋人が発症してから病気を治療していた時代、中国人は「未病」という考えを提唱した。

 発症後が既病、発症前が未病である。病気の原因はすでに体内にあるが、発症には至っていない。この段階で治療することが最善と見なされた。
 今のように高度な医学のない時代、発症すれば盲腸でも死ぬ時代に、まず病気を発症させないという点を重視したのは特筆に値する

 つまり、予防の概念を中国人は早期に得ていた。
 もう一歩推し進めれば公衆衛生にたどり着いたはずで、近世の段階で公衆衛生の概念を会得できたかもしれないが、例によって中国人は改良が死ぬほど嫌いなので至らなかった。

 このため、食医という医者がいた。彼らは精のつくモノを食べさせるのが仕事だった。

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 体力さえあれば病原菌を免疫が打ち負かすわけで、理にかなった考えだった。

 漢方が西洋薬と異なり、病原体を殺傷する方向に向かわなかったのもこのせいだろうし、漢方は西洋薬とと比べて遙かに歴史が古いために、根治よりも症状や病状の緩和を是としてきた。
 だから、原因にきく漢方はほぼなく、漢方は症状にきく。対処療法と言われればそうなのだが、紀元前後の段階では最適解だったはずだ。

 こう考えていくと、忌避があったのとは別の意味で、外科手術が生まれなかった理由がわかってくる。

 そもそも西洋においても外科手術の生存率がまともになったのは19世紀も末になってからで、この時点ではまだ漢方の方が生存率が高かっただろう。
 不衛生な場所で病原菌に感染し死ぬほうがずっと多かったはずだ。

 ゆえに、体力を奪い、快復へ向けてむしろマイナス効果しかない、と中国人が外科的手法を取り扱ったとしても驚かない。

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 センメルヴェイス・イグナーツが手洗いこそが妊婦の死亡率(ウィーン医学部では10%という驚異的死亡率だった)をさげると統計的に証明したときでさえ、彼は嘲笑された
 19世紀半ばの話である。彼は何か病気を引き起こす粒子(最初に細菌に言及したと言えるだろう)が存在し、それは手洗いで流せると考えた。

 今では子供も知っている手洗いの重要性はこのとき初めて確認された。