言語の数は数万とまで言われるが、人類史上、他言語に極めて大きな影響を行使し、古代から続く膨大な文字資料を保持してきた言語は上にあげたくらいしかない。
次点で、リンガフランカだったペルシア語やラテン語、現代ではフランス語や英語がくるだろうが、上にあげた言語はアラビア語以外は太古から文献が存在し、のちに他の言語の影響を逆に大きく受けて変質(サンスクリット→ヒンズー語など)するが、それでも、最初期に現れ、そもそもが文明を建設した言語なので、ほとんどここから文化、文明が始まったといえる言語たちである。
この点でラテン語は次点になる。
グレコ・ローマンというように。ローマ文化はギリシャ文明の重力からほとんど逸脱していないコピー品のようなものだ。特に古代において重要だった神話体系がギリシャ神話の丸写しなのが最大の論拠だ。
古代エジプト語が入っていないのは、殆ど古代エジプト語は外部へ影響を及ぼさなかったからだ。メロエ王国のような例もあるが、痕跡は殆どなく、シュメール語やアッカド語などと違い、現役(コプト語は直系の子孫だ)だが、影響はゼロに等しい。
かくいうアラビア語も、ヘブライ語、アッカド語、アラム語、フェニキア語、バビロニア語の親戚筋で、アラビア語自体は長く暗黒の世界にいたが、同族は古代文明を担ってきた優秀な言語だし、そもそも、世界最初の文明の地ではシュメール語(なんでこいつが系統関係不明なんだよ!)以外はほとんどセムハム語系(※1)だったわけだから、アラビア語の潜在能力がそもそも高かったわけだ。
※1
アフロアジア語という言葉は嫌いである。
あたかもヨーロッパでは話されていないというニュアンス(暗に反イスラム・反ユダヤ的匂いがする)があるし、アフリカだってアジアだって、セムハム語が支配的な地域の方が少ない(アジアなら漢語とヒンズー語の方が圧倒しているし、アフリカでもバンツー系やスワヒリ系の方が勢力が強い)のだから、アフロアジアなど言わないでいただきたい(ユーラシアで支配的なのはインドでは印欧語、人口的にはシナチベット語系だ)。
西洋中心主義すぎておおいに嫌いだ。
セムハムというと今度はキリスト教臭いかもしれないが、もとをただせばユダヤ教で、そうなるとイスラム教的でもあり、ずっとニュートラルな表現だと思う。最近、西洋人はグローバルヒストリーという虚妄を御旗に歴史修正主義に走っている。