日本人はドイツに何か変な憧れを持っている人が多い。
イタ公抜きでやろうとか、日本人に似ているとか、その最たるものだろう。
おそらくだが、ドイツ人はそんなこと微塵も思っていないし、イタリア人の方が似ていると思うし、欧州で日本人を好き(半数以上が好意的)なのはフランス人だけだと思うよ。
で、ドイツ製は品がいいみたいな話をきくが、果たしてそうだろうか。
ドイツ製品というのは、フランス製品やイギリス製品に比べれば、まだお目にかかる機会がある。というか、イギリス製品って何があるのだろうかレベルでわからない。かつての世界の工場はどこへいったのか。
さて、私はいくつかドイツ製品を愛用している。
ファーバーカステルのペンシル、ラミーの万年筆、ステドラーとロットリングの製図ペン、ライカのレーザー距離計、ボッシュの電動工具と探知機、ヘンケルスの包丁と枝切りばさみ、ジーメンスのファクトリー製品およびCADソフト。
で、正直な話、日本製と比べて品質がどうかといえば、よいとは言い切れない。まあ、悪くもない。ただ、高い。
ファーバーカルテルのペンシルは三菱鉛筆の2倍するし、ラミーの万年筆は安いやつでも5000円くらいだが、セーラーやパイロットなら同様の品質のものが1000円からある。ライカの梱包はLenovoの梱包と同程度にひどく(なかがぐちゃぐちゃ)、ボッシュはマキタに比べてチープな出来だ。
ただヘンケルスはいいと思う。
特に枝切りばさみはお気に入りで、酷使に耐える。包丁も切れ味が鈍らないし、日本製と比べて高価でもない。
じゃあおまえ、日本製(ドイツ製品だけどmade in japanってのあるけど)を使えよ、と思うだろう。
でもねえ、ドイツ人って武骨なイメージを抱く日本人が多いけど、やっぱりヨーロッパ人なのよ。デザインに気を使っている。
ラミーのサファリ(万年筆)なんて1970年代に設計されてからモデルチェンジしていないらしいけど、今でもかっこいい。デザインが古びないし、デザインを容易に変えないから、あ、あれラミーだ、すぐわかる。
まあ、ぱっと見で、ラミーとアルスターとルクスの区別はつかんが。
ここも、材質でランク分けされているのも興味深い。
サファリはプラ、アルスターはステン、ルクスは真鍮となっているが、ペン軸は同じだ。
性能は同じなのだ。
質感が違うだけ。
西洋ではペーパーバックとハードカバーが同時に販売されているが、これもその一種だろう。日本人のやらないマーケティング(日本では時間が経った廉価版が文庫本である)だ。
パッケージも変わらない。
ロットリングの製図ペンは半世紀前と同じ機械でつくってるとしか思えないパケでやってくる。日本人はすぐにデザインを変えてしまうから、デザインの普遍性がない。
カメラマニアなので思うが、ライカはデザインをあまり変えてこなかったのが大きいと思う。
日本のメーカーではキヤノンだけが初代EOSからあまりデザインを大幅に変えないでいるが、ニコンやミノルタなんて、10年前のカメラのロゴを隠して知らない人間に見せたら同じメーカー、同じシリーズとだれが気付くだろうか。
流行りのデザインに流されてしまう。
ドイツでは今もクラシックが幅を利かせていて、CDも売れたり、プロの楽団が10万都市でも成立するくらいだが、流行りとは別に保守的というわけでもなく、伝統を大事にしているのだろう。
日本も?? 日本の場合、みんな本当は伝統は嫌いだろう。
保存会がないと成立しないか、古典芸能も大人口地域じゃないと成立しえない。伝統なんてのは、補助金目当てか自己正当化の方便か、飲み会の口実であって、文化的なニュアンスはゼロに等しい。
ドイツ人と日本人は少しも似ていない。むしろ真逆。
また、日本の企業は古くからある!! と吠えるやつがいっぱいいるが、昔から続く大企業はまずない。ほとんど戦後の企業だ。
大企業ではなくても、世界中で売れている伝統企業があるだろうか。ない。あってもそれは嗜好品でしかない。
先上げたファーバーカステルとかヘンケルスは300年続く企業で、必需品を売っていて、世界的に知名度があるし、販路もある。そんな企業はないのだ。日本には。
とはいえ、何度も言うが、日本製は梱包は丁寧だし、デザインはごみ(まあ、アメリカ人のデザインはもっとゴミなんだが)だが、ものは悪くない。
ただ、デザインがよくないと使う気にならない。
iPhoneが売れているのもデザインだが、とてもアメリカ製品とは思えないデザインだ。アメ車やXboXなんかを見てもアメリカ人が日本人以下のセンスなのは明らかなのにねえ、といつも思う。
ソニーが日本企業と思われていなかった時代があるのは、デザインのせいだと思う。
ソニーはパクリデザイン(だいたい欧州の猿真似をしてクオリティは追い付かない)をあまりしないし、実用を蹴ってデザイン性を採る(日本企業はこれをしたがらない)ことをしてきた。
そういうわけで、私はデザインが気に入っているからドイツ製を使う。
まあ、ボッシュについては安いからだけども(マキタ比で3割安くらい)。
ここは完全実用品(多少は職人のかっこつけ要素はあるにせよ)の電動工具ゆえだろう。
マキタには誰も勝てない。ハイコーキ(日)、ブラックアンドデッカー(米)も勝てない。だからマキタが一番高い。
そうそう、ドイツの有名な配送会社DHLはクロネコのクオリティはおろか、佐川以下である。しかし、そのどちらよりも大きい。