それまでパンチカード、リレー回路で制御されていた多くのものが20世紀の後半、半導体によって置き換わった。
モーターさえも単純なブラシモーターではなくブラシレスで、制御回路が必要だがメンテフリーで正確無比だ。
半導体はほぼすべてのものを置き換えてきた。
しかし、どうしても置き換えできないもののひとつに光学装置があった。
光学はアルハイサムやニュートンが光学者だったように、科学の基礎とされる学問である。
光学は複雑な演算を必要とする一方、複雑な機械的機構が必要ないことから、科学の初歩であったと思われる。
逆に言えば、蒸気機関の製造には光学のような複雑怪奇な計算は必要ない代わり、大きな機械の仕組みが必要だ。量産するにしても、工場が必要だが、レンズは内職でできなくもない(実際ガリレオは自分で一から研磨して望遠鏡を作った)。
さて、私はカメラが趣味だが、もう完全にソフトウェアのパワーが光学補正を凌駕して久しい(レコードが本質的にはCDよりも音域が広く、収録した音源の再現性が完璧である一方、それ以外のすべてにおいて劣るのと同じ)が、もうデジイチは終わったと印象が強い。
カメオタたちはEOS RやSONY αのAIによるAFなどに狂喜乱舞しているが、そのAIはコンピューショナルフォトにも当然だが応用できる。
OMDSやリコーは明らかにコンピューショナルフォト路線へいこうとしているが、無理筋だ。iPhoneに絶対に勝てないからだ。
というのも、半導体はほぼ投資金額で決まるからだ。
アップルの研究開発費は2兆円といわれている。撮像素子はSONYだが、SONYも膨大な開発費を注いでいる。
SONYの研究開発費は5000億円。キヤノンは3000億円で、キヤノンはまだいいとして、富士フイルムは1500億円だが、このうちイメージング部門は売り上げ1割程度なので100億円くらいしかあるまい。
リコーも1000億円だが、同じく、100億もないはず。
ニコンに至っては600億円で、ゲーム会社の任天堂以下だ。まあ、あの日本電産が500億というから単純ではないかもしれないが・・・。
アップルの開発費のほとんどはiOSの開発費だろう。ハードウェアは外注搾取でつくってんだから。
iOSの年間開発費は5000億円はあるだろう。
キヤノンもうち、ソフトウェア部分は数百億だろうし、話にならない。
また、スマホカメラ自体はXiomiやSamsungなんかも膨大な研究費を注いでいるのは間違いなく、キヤノン、ニコン、ソニーのイメージング部門、OMDS、リコーのイメージング部門、パナのイメージング部門、DJI程度の研究費では足元にも及ぶまい。
世の中、かけた金がすべてではないが、トヨタが落ちぶれないのは莫大な研究費を注いでいるからだ。
日本企業で兆単位の研究費を使っているのはトヨタしかないのだ。というか一時期は世界一の研究費だった(日本の半導体がダメになったのは売り上げが落ちたときに研究費をカットしたからで、Samsung会長はこれを日本に勝てないと思っていたが、あろうことか「自滅」した、と評した。)。
いくらRやZやαが優れていようと、もはやソフトウェア処理が隙間を埋めるだろう。もう秒読みだ。
こうなってくると、カメラ趣味者はクラシックへ向かうのは間違いない。
クラシックカメラの市場価値はあがり、フイルムの生産数はあがる。
フイルムカメラはスマホとは次元の違うもので、いわば、ストリーミングの時代にレコードが復権したり、映画館での動員が増加したのと同じだ。
ただ、問題はデジタル処理がいかにすぐれていても生データがカスだとダメだということだ。そう、最近望遠レンズがスマホに搭載され始めたが、望遠である。
案外これを置き換えるのは困難に思える。
ネオ一眼が復権する可能性が示唆される。むしろ、デジイチ亡き後も生き残っているのはネオ一眼かもしれない。
2030年までにはソフトウェア処理がハードウェア(光学)に打ち勝ち、カメラ関係は暴落するだろう。
中古市場もデジカメが激安となる一方、クラカメは青天井で価格がつりあがり、今20万くらいで売っているライカRシリーズの中古も100万を超える。美品なら1000万、2000万もありうる。未開封なら億だろう。
レコードが異様な値上がりをしているのと同じだ。
レコードはフイルムカメラよりもずっと早く命脈を断たれた。20年くらいまえは、レコードは一部を除き、ごみのように扱われた。
そう考えると、フイルムカメラも置き換わりが完了した10年くらい前が底値だったので、2030年くらいに暴騰してもおかしくない。