世界は確実に狭くなった。
スモールワールドは実現した。
それとともに、私たちは否応なくテックの波に飲まれることになった。
私の父の子供時代は現在より、江戸時代に近かったといえる。
都会はそうではなかったかもしれないが、ほとんどの人間にとって戦後すぐは江戸時代と同じようなものだった。
飛行機も車も電話もTVもあったが、ほとんどの人間は一生飛行機になど乗らず、運転免許をもっていない大人も少なくなく、電話もTVも各家庭になかった。
洗濯は洗濯板だったし、トイレはボットンだったし、電化製品は電灯くらいしかなかった。そもそも、電話自体が電源レスなのだ(黒電話に電源は要らない)。
野良仕事では牛が使われ、大八車を引いて機材は運ばれた。
私の子供の頃でさえ、半導体がそこら中に満ちあふれてはいなかった。
ダイヤル式電話に電子的な部分は一切なかったし、おもちゃも100%機械仕掛けだったし、車もフルメカのものがまだ走っていた。高級車には半導体がぎょうさん乗っていたが、そんなもんは庶民には縁がなかった。
ダイヤル式ブラウン管TVも電子機構などない。
オーブンや洗濯機のタイマーも大昔から存在する機械式タイマーで制御されていた。チチチチチチと鳴いた。
取引は電話で、通信ネットワークは存在はしたが、ネットはまだまだ存在すらしていなかった。PCネットワーク自体はあったが、音響カプラという異様な(今から見れば)な機材が用いられた。
パソコンはあったが、超高級品だった。
しかし、私が高校生くらいのころから3~4年でネットが普及した。MMOも流行った。
それまではビデオテープを遠隔の友人に録画してもらい郵送してもらうというトンデモな方法だったが、大学生の頃にストリーミングが始まった。
中学の頃にケータイが普及し始めた。ポケベルは死んだ。
車も電子化が瞬く間に進んだ。
21世紀になると半導体を搭載していないものが珍しくなった。自動車もCAN制御になり、フットブレーキ以外は電子制御だ。