漫画業界の先は暗い

 漫画にサブスクが登場しないのは、音楽や映画とは決定的に違う点がある。それは漫画はコミック売り上げで成り立っているから、サブスクやYoutube無料配布では大赤字なのだ。
 たとえば、音楽の場合、曲は昔から無料で垂れ流していた。現在は昔よりもライブが一般化して、マイナーなアーティストでもハコは小さいが頻繁にライブをする。そう、無料で配ってライブで回収するのだ。
 またCDは一回買えば終わりだが、ライブは何度だっていってもいい。またファンならグッズが欲しくなる。そう、曲はロハでもあとで回収する方法がいくらでもあるし、どんなに音響をよくしても、CD音源では生ライブに勝てない。だから、ファンなら、どうしても行きたくなる。

 次、映画の場合、ほとんどは上映によって回収する。ビデオ売り上げというのは二次的なもので、ストリームで配信しても左程利益に差が出るわけではない。また音楽は世代が違ってもきき継がれるが、映画ではそういうものは少なく、上映時が利益回収のピークである。ゆえに、割れは漫画ほど問題にならず、サブスク化は容易であった。
 なぜ映画が音楽に比べ語り継がれにくいのかは、視聴時間に起因する。音楽の場合、先輩からちょっときいてよできいても5分だが、映画の場合は2時間である。あきらかにハードルが違い、音楽はその簡便さゆえに聞き継がれる。

 さて、漫画であるが、漫画の場合、音楽ライブのような大規模に利益を回収する手段がない。映画化はそうかもしれないが、映画化すると権利が分散し、版元や著作権者にはほとんど入らない。
 テルマエ・ロマエの映画化権料が100万円だったのは有名な話である。ブラックジャックによろしくの作者は映画化権利料が少なすぎると腹を立てていた。100万だったのだろう。

 アニメはどうか? アニメも円盤の売りあげは期待出来ず、現在も宣伝番組としての意味合いが俄然強い。所詮はコミックを売るための宣伝なのだ。タイアップ曲なんかも曲を売るためのものだ。
 また、最大の違いは、コミックは紙で買って読もうが、割ったjpegで読もうが本質的にも体験的にも殆ど違いがないばかりか、ほとんどの電子書籍よりもjpegのほうがずっと読みやすいという大きな利点がある。
 これがコミックの割れが後を絶たない理由だろう。電子書籍はUIがクソだし、著作権保護のせいで読み込みも遅い酷いのになるとスキャンしたjpegよりも画質が悪い。値段は紙媒体と同じ。これでは割れが流行るのもむべなるかな、だ。

 映画の場合、どんなすごいAVルームも映画館には絶対勝てない。音楽も、どんなすごいオーディオルームもライブには勝てない。
 しかし、漫画はjpeg割れの方がむしろ勝ってすらいる。これは深刻な問題だと思う。サブスク化によってタダ同然で配ったり、youtubeでロハで見せるという手法でもって、別のプランで回収することがおよそ困難なのはコンテンツとして、これから危機的状態になってくると思う。

 参考になるもののひとつがエロ漫画業界だ。
 エロ漫画業界は通常の漫画業界よりも割れが横行していて、私の見立てでは9割がた割れで鑑賞されている。勝手に翻訳され世界中で無料で読まれている。
 このせいか、ちょっと名前が売れるとコミックを出さずに、電子同人を売るようになる作者が最近は増えた。これは当然の話だろう
 漫画を描くよりも電子同人は手間がかからない。どうせ割られるのは一緒(そもそも配布がjpeg)だが、手取りが雲泥の差だ。漫画の場合、10%だが、電子同人なら多ければ7割は手元にくる。コミックで一万部売るのは大変だが、電子同人で1000DLならほぼ儲けは同じ

 さらにパトロンサイトの隆盛で、名前が売れるとそこに閉じこもるようになった。当然だろう
 勝手に割られて、酷い場合はそれが有料で配られている(私が子供のころは、割るとはいってもハードコピーくらいしかないので、紙代とインク代がかかるため、容易にコピーできなかった。パソコンに取り込むにしてもスキャナの精度はゴミで使いものにならなかった。明らかに紙媒体そのもののほうがよかった)。
 やる気もなくす。だから、エロ漫画業界は完全に衰退期に入っていて、少しでもいいなと思った漫画家も、コミックは出ず、パトロンサイトに閉じこもってしまう。ベテランも活動はしていても、もはや本誌には描いていない人が多い

 日本よりもずっと著作権が簡単に侵害されてきたアメリカでは真っ先にアメコミが滅んだのと同じだ。
 日本人の思い込みとは裏腹に、あの国は著作権侵害に甘い
 考えてもみろ。アメリカを代表するアーティストにウォーホルがいるが、彼は著作権、肖像権を侵害しつくしている。なぜなら、相手が訴えなければ何をしてもいい国だから。ゆえに、日本の著作物はほぼ侵害され、勝手に商売されているとみていい。市場の大きさや、アリエクで売っている安物とは違い、大手メーカーが勝手にシャツやグッズを出しているケースもあり中国よりも遥かに質が悪いえ? いや? なら訴える? もちろんアメリカの裁判所でね(この手法はGoogleも多用している。GoogleMapでで損害を受けても泣き寝入りするしかない)。
 となると二の足を踏むことになる弱小は多い。
 戦えるのは結局、石ノ森プロくらいの会社規模が必要になる。
 私が思うに、あと10年もすれば中国の方がアメリカよりも日本の著作物を尊重するようになるだろう
 理由は同じ東アジア人であることと、イヤなら訴えろ精神は中国人にはなく、彼らはいまだに儒教道徳を強く持っているからだ。信義にもとる行為はアメリカ人よりも中国人のほうが気にする。

 さて、そんなこんなでコミックとしてのアメコミはほとんど絶滅危惧種で、アメコミのメーンストリームはずっと昔にハリウッドになってしまった。日本もそうなるかもしれない。ネトフリがブイブイいっているが、ああいうストリーミング会社がアニメ業界を掌握し、そこが漫画界を支配する構図だ。