作者は天才だと思う。
私はTSものは嫌いじゃないのだが、「オレが私になるまで」のようなTSを受け入れていくものが大半だ。
「異世界美少女受肉おじさんと」は美少女化を利用するが、男に戻りたがっているようには見えない。
本作が過去のTS作品群と違うな、目新しいなあと思うのは、「ひきもり(平原は一体全体何で生計を立てているのだろうか・・・)」や「キモオタ」である元おじさんたちは、一貫しておじさんに戻りたがっているという点だ。
TSを歓迎したのも最初だけで、折角美少女になったのに碌な目にあっていない。
大抵のTSものは、TSを受け入れていくが、この作品のおじさんたちは受け入れる気がない。配川なんかは、明らかに美少女化したおかげで収益が100倍くらいになっていそうだが、それでも元に戻りたがっている。
彼らは童貞だし、褒められた人間でないにも関わらず、美少女化を拒否している点がこの作品に味わいを与える。
また、平原以外はドルオタを除けば、オタク度が薄い、という設定もよい。
店長に至っては、オタク度はなし、いつまでも一人称は俺のまま変更しないばかりか、仕事もそのまま続けていて、最初の頃は女の子らしい服を着ることすら拒否していた。
この、TSした人間が特段特別扱いされていない世界観がなんだかよい。ゆるいというか。なにせ、すでに5人もTSしているというか、初手から4人だからね。
作者のSSがネット上に転がっていたので読んだが、TSに対する視点が月並みではなく、独特で大変よい。
ちやほやされることでサセ子になってしまったやつ。
美少女化して、いい思いをしたが、嫌な思いもしてしまい、男に戻りたいと泣くやつ。
なんというか、絵柄も可愛いし(エロを描くらしいが)、TSの身体的な部分ではなく精神的な部分にクローズアップしているけれども、ジェンダーの話とかには全然与してなくて、美少女したおじさんがまあ酷い目に合う話なんだ。
あとなんだかんだ4人に友情が芽生えているのもいいよね。
ところで、5人もいて、全員ロリ(配川だけは身長高そうだけど)なのは作者の性癖なんだろうか。4巻のおまけに初めてTS巨乳が出てきたけど、あれ、おまけで終わらせるのはもったいないと思います。
あと、おじさんたちは元に戻ろうと頑張っているし、戻ってほしいけど、ぶっちゃけ戻ってほしくない気持ちもあるよね。もう美少女でいてよ!! この二律背反もきもちいいいい。