ものづくり軽視社会

 日本はモノづくりの国と言ってはいるが、モノづくり自体は非常に軽視されてきた。


 職人の弟子に外国人が増えているのは、まあそういうことだろうし、私が衝撃を受けたのはタカラだったかエポック社だったか。なんだったか忘れたが、バンダイではない(バンダイは開発部が優遇されている珍しい会社だ)おもちゃ会社の開発部を取材していたTVだった。


 おもちゃ屋の開発部といえば心臓部である。

 ここがなくちゃ話にならないはずだ。しかし、その会社の開発部はなんと個別のオフィスがなかった。本当にびっくりした。有名なメーカーだったからなおさらだ。

 しかも人員も異様に少なく10人くらい。彼らは事務員と営業が100人以上詰めている大部屋の隅っこで、まるで窓際族のように仕事をしていた。


 はんだごてを使ったりするので、事務員の女子からは煙たがられていた。会社の根本的な部分を煙たがるというのも、まあ、異常な話である。

 開発部は窓際族扱いなのだから、おそらく出世も絶望的だろう。課長にすらなれるかわからない。開発部課長はきっと元事務員がなっているのではないだろうか。


 それでも、確かに彼らは仕事自体は楽しそうだった。好きなことをしているからそうかもしれないが、これが「やりがい搾取」以外の何なのだろう。
 何かに人生をささげる人間から搾取するなんて言語道断だと思うが、日本ではスポーツ以外で人生をささげることは評価されない。スポーツに関しては異様に評価されていて、インターハイ出場さえすれば勉強は駄目でも医学部推薦だって夢じゃない。実際そういう人を知っている。


 野球しかしてこなかったのに大企業に就職したやつも知っている。

 さらに実業団なら普通の仕事もあんまりしなくていい(おかしな話だ。給料をもらって一日中将棋を指すのは駄目なのに)。

 特に野球は異常なほどに評価される。甲子園にさえ行っておけば、就職は安泰。絶対大企業に入れる。面接で言えば一発だ。


 スポーツなんぞ何も生み出さないのになあと思うが、そういう国なのだ。
 そして、好きを仕事にして唯一スポーツ以外で高額を得られえる仕事がある。「漫画家」だ。
 本当に例外中の例外だが、これが日本の漫画が強い理由だろう。黒人アスリートが強い理由と同じだ。

 

 だから現在のものづくりの惨状は、軽視に軽視を重ねた結果だ。漫画が世界で戦えるのは、漫画家が例外的に高額な取得を得られる可能性がある「ものづくり」職種だからに他ならない(アニメは? と言われるかもだが、アニメは商業的には全く駄目である。そもそも日本のアニメは放映権料がほぼタダだったから普及したのに対し、日本の漫画はローカライズ費用がかかるため、外国では1.5倍の値段がする)。