今の10代は知らないかもしれないが、昔は夕方5時から夜の8時くらいまで、アニメを結構やっていた。
そのころのアニメは、みなだいたい販促アニメであった。
ようは、原作(漫画)を売るか、グッズ(おもちゃ、プラモデル)を売るのが主目的で、アニメ自体はどうでもよいものだった。
世界名作劇場はちょっと違い、『カルピスこども名作劇場』や『ハウス食品・世界名作劇場』という名称で放送されていたように、企業が自社のイメージアップや宣伝のための番組だった。
アニメなどおまけ。そういう世界であった。
アニメ自体は主ではない。
これは現在、その重厚長大な世界観で売るガンダムだってそうだ。
ガンダムシリーズは円盤そのものも売れるが、もとをただせばクローバーの販促アニメであり、のちにバンダイの販促アニメになった。
今もアニメよりもプラモの占める売上の方が大きいので、販促アニメであることは変わっていない。
だから、ガンダムは令和になってさえ、夕方に放送するのだ。
アニメを買ってもらうのではなく、プラモを買ってもらうためにだ。
だから、なんとなくTVをつけたらやっていた、という時間帯がいいのだ。深夜のように、あえてアニメのために起きている人を視聴者に想定していない。
TVをつけたらかっこいいガンダムが見えた。それでいいのだ。
ゆえに、販促アニメである昔の夕方アニメは放映当時にビデオ化されなかったことが多い。
そもそも、アニメビデオを買うなんてこと自体、あまり想定されていなかったし、TVアニメはクオリティの低いものであって、金を出して高クオリティを見たいならOVAという、アニメ自体を売り物にしたジャンルが別途存在した。
ヤシガニやキャベツだって、クソクオリティの夕方アニメを見ていた人にはどうでもいいことではなかっただろうか?
るろ剣やハンターハンターの続編がOVAだったのは、アニメ自体の続きを見たい人間へ向けて作成されたからだろう。
しかし、このビジネスは深夜アニメが興隆する時代になって衰退を始める。
深夜アニメは円盤を売るのが目的だが、放映自体は宣伝というものだ。アニメ自身が自分を宣伝し、自分を売るのだ。
そしてこのモデルは、当然だが、うる星やつらの連載当時にはなかった。
連載当時のうる星やつらは、あたりまえだが、原作本を売るのが目的だった。
この原作を売る系のアニメは、週の出来にムラがあり、クオリティが低く、見れないわけではないが、真面目に見るものでもなく、だらだら垂れ流してメシや菓子を食いながら暇つぶしに見るもの、であった。
作画が崩壊しても騒ぐやつなど0に等しい。だって、真面目に見ていない。
だから、このフォーマットのまま、現代の深夜アニメにもってきてもダメだ。
なぜなら、うる星やつらのリメイクは円盤を売るためのアニメだったはずだからだ。だから、だらだらと垂れ流すようなかつての夕方アニメみたいなスタイルだと一瞬で飽きられる。
深夜アニメはとてもすべてが追えないので、一話切りされる世界だからだ。
もちろん、原作も売るつもりだったかもしれない。
しかし、うる星やつらがいくら名作でも、40年近く経った今、あの原作を売るのは厳しい。DBだって今、原作を売るのは厳しいから、IPで稼いでいるのだ。
失敗の理由としては、うる星やつらはもともと原作売り販促アニメだったことにつきる。
ガンダムやDBもそうであったが、原作だけ売る販促アニメではなかった。ガンダムはおもちゃを売るのが目的だったし、DBもカードやゲームを売るのも目的だった。
うる星やつらには原作以外、せいぜいラムちゃんのフィギュア程度しか売るものがない。
これでは失敗は必至だ。
過去の販促アニメスタイルでは円盤は売れないし、販促アニメとして夕方に放映するにしたって、売るものがない。
企画を考えたやつはアホだ。