泣き寝入りしたり自殺するような雑魚よりは、気骨のある男。山上容疑者を見たときそう思った。
復讐は胆力がなくして、成し遂げられない。
泣き寝入りの方が楽だ。
自殺のが楽だ。
関係ない無防備な一般人を殺す方が楽だ。
もし、権力者を狙うなら、準備に何年もかかるだろう。
そのあいだ、復讐心を消えることなく持ち続ける精神力は並ではない。
山上は、たぶんだが、まっとうな家庭に生まれていれば、ひとかどの人間にはなったのではないか。そう思う。あの胆力と実行力だ。常人ではない。
なにせ、場当たり的な犯行ではないのだ。
実に計画的なのだ。
復讐心を持ちつつ、冷静に計画を練り、統一教会潰しは成功率が低そうとみるや、なにがしかのダメージを与えるためにターゲットを変更する周到さ。
一人で統一教会を破壊するのは無理だから、一人でできる最大限の復讐を行ったわけだ。
統一教会と自民党は分かちがたく結びついているので、自民党最大派閥の長、岸の孫を狙った。
一種のダークヒーローであろう。一時期騒がれたジョーカーとは全く違う。
彼に共感した人間は少なくない。私だって、復讐を貫徹する彼の意思に感銘すらした。
復讐はよくないと特に日本人は刷込みのように教育されるが、「やったらやり返される」ことをきちんと社会に示した意義は大きい。
アメリカンヒーローはバットマン、ロボコップなどダークヒーロー色が強いものが多い。スパイダーマンも叔父を殺されたことにより、悪を根絶しようと誓うのだ。
これも一種の復讐劇だ。
一方、日本で有名なヒーローにこの手のダークヒーローは、あまりいない。仮面ライダーは近いが、最初だけだったし、作品による。
そういえば、デスノートは海外でも受けたが、月はダークヒーローだったかもしれない。
むしろ、日本のヒーローというのは、水戸黄門とか暴れん坊将軍とか、現代劇では警察官も多い。警察官でもダーティハリーみたいなやつはいない。まあ、エアフォースワンって映画がハリウッドでもあったけども。
日本のヒーローは「公務員」が多い。
また、医者ものも多い。医者は復讐とは正反対の世界で、たとえ犯罪者でも(京アニ放火の青葉みたいな極悪人でも)救う必要が求められる。
ちょっと違うな、と前から思ってはいた。
日本の創作物には、悪に虐げられるモブの存在がとても希薄なのだ。
山上は、日本では珍しいヒーロー像だと思う。