大金の使い道

 大金を手に入れたら金銭感覚が変わるというが、それはたぶん、もともとそういう金銭感覚だったのだと思う。「単に金がなくて使えなかった」だけだ。
 そもそも、宝くじとかじゃない限り、お金が欲しいから努力するわけで、なぜするのかといえば、そういう金銭感覚をもともともっているから、その、自分の生来の感覚通りのお金がほしいわけだ。

 

 私の場合、別にこれ以上稼いでも別にどうでもいい。努力はだるいし、資格とか経験もないし。

 

 そして、私は大枚を使うような嗜好、趣味がない。
 車は乗れればよいと思っているし、家は狭いほうが落ち着くのででかい家は要らないし、衣類には興味がないし、ギャンブルは一切しない。女は好きだが、ヤるだけならいいとして、それ以外の関係性がだるいので、愛人を囲う人間がよくわからない。高級風俗でいいんじゃないか? と思う。

 

 あえて使いそうなのは、パソコン、カメラ、旅行くらいだが、旅行はそもそも時間がないから無理だし、パソコンにしても個人ユースなら高くても100万だ。毎年買い替えても車とか時計とかに比べたら全然安い。維持費は電気代のみだし。
 カメラは高いものはべらぼうに高いが、維持費はかからないし、ライカのセット品が300万くらいするが、たぶん、私が欲しいもので一番高いものがそれで、買ったらほかに買うようなものはない。
 カメラにしても、私にとっては実用品でコレクションしたり愛でたりするものでもないからだ。

 

 だから、大金もっているのに使っていない人は、別にもったいないとか思っているわけでもなんでもなく、特に使い道がないのだろう。

 

 マイクロソフトの創業者ビルゲイツがファーストクラスを部下が予約したらキレた話があるが、彼にしてみれば、高い金払っても飛行機が早くつくでもなしで、もったいないとかそういう感覚というよりは、「意味ないもの」にお金をかけた=金を捨てたことにキレたのだと思う。
 彼は確か自家用ジェットももっていたはずなので、普通の旅客機のファーストだのエコノミーだのには興味がなかったのだろう。

 

 聖人で有名なキアヌにしても、彼は売名に興味がないようで、莫大な寄付をしているのにそれを公開していない。大きな屋敷を買ってはみたものの、住んでもいないようだ。じゃあ、彼が倹約家なのかといえば別にそうではなく、趣味のバイクには湯水のように金を使っている。
 ようは、セレブな暮らしに興味がないのだ。そして、キアヌの収入からすれば、趣味のバイクはお金がかからない趣味と言える(一般人からしたらそうではないが)。

 

 確かココ壱番屋の社長もそうで、吊るしのスーツばかり着ているし、質素な暮らしをしているようだが、彼もまた、豪遊に興味がないだけだ。ストラディバリを買って、売れないバイオリニストに貸し出しているとかいう話を聞いた気がする。
 これはいい金の使い方だ。
 感謝される。
 貸したバイオリニストがもし超有名になったら、間違いなく、命の恩人レベルの称賛をしてくれるはずだ。こんな気分のいいことはあるまい。銀座のスナックだの、愛人だのに億単位の金を使うよりも、売名行為としてばらまくよりも、一見、慈善事業に見えて、これほど自己満な金の使い方もない。
 金持になったら見習いたい使い方だ。