憂邦烈士連合会@ソロプレイ

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【感想】共生仮説

 キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』に収録されている短編。
 怖い。
 ホラーである。

 私は貴志祐介『天使の囀り』、小林泰三『酔歩する男』が好きで、人間性や常識などに疑義を挟んでくるホラーがマジで怖いと思っている。単に超常存在など怖くないし、しょせん想像のグロでしかない。

 しかしだ。

 本当にあなたはあなたなのか? 人間は存在しているのか? 意思はおまえのものか? そういうのに疑念を抱かせるような作品は怖い。『酔歩する男』は私が読んだ小説の中で一番怖かった。二三日、怖かった。

 『共生仮説』もなかなかホラーであり、この一遍のために買ってもいいといえる。

 人間性は人間のものではない、という話だ。

 人間性は人間に寄生する別の宇宙生物由来なのだ、と。ミトコンドリアに準えて語られるのだが、人間性をなくした人間は動物にすぎないわけで、そして人間を決定づけている人間性は人間のものではない、と。

 怖くない? ねえ、怖くない?

 で、韓国SFは初めて読んだのだが大変読みやすい。

 日本のSF界は英米SFを絶賛(あれだけ世界で評価された『三体』の翻訳は先進国で一番遅かったんじゃないの?? 馬鹿にしてたんでしょ。中国SF)してやまないが、正直、英米SFって面白くないのが多い。やっぱり文化圏が違うからかね。

 その点、日本と世界一近い精神性を持つ韓国のSFなので、どれもわかりやすい。

 ただ、昔から韓国産のRPGやMMOのストーリーに対して思っていた疑念はそのままというか、わりと伏線回収が雑だったり、起承転結が唐突なのだ。
 もっとも、英米作品は起承転結すらないものが多いが……(中国SFも、『三体』は設定も起承転結もしっかりできていて、まるでハリウッド映画のように精緻なシナリオだったが、ほかの中国SFは起承転結に乏しく、英米SFににている)。