推しの子が与えた影響は案外でかい。円盤は売れないだろうが。
アニメ界や漫画界には大した影響はなかったが、外の世界にむしろ影響した。
まずはアニメ主題歌にYOASOBIを起用する流れ。
YOASOBIはそのコンセプトからして、物語から音楽を作るという。
これは古いアニメの主題歌の思想だ。
昔のアニメは主題歌は劇中の話を歌っていたが、そのあとはタイアップが増え、るろ剣のようなめちゃくちゃな主題歌になっていく。これがゆり戻された。
これはアニメ業界への影響と言うよりは、音楽業界のタイアップとは何かを再検討する必要性が出たことを意味しているように思う。
また、日本語の歌詞の曲としては異例な売り上げをアメリカで記録した。坂本九以来である。
大谷もそうだが、経済と政治がずっと低迷する中、こういった本質的ではない部分でアメリカでヒットするのは、ネトウヨに困った勘違いをさせそうで恐ろしい。
私の娘も幼稚園だが流行っているようで、歌っている。
ここで重要なのはほとんどの人は本編を知らず、曲だけを知っている、ということだ。Adoの曲だと思っている人も少なくない。
アニメはまあつまらんし、ちゃんと見た人は周囲にあまりいない。
これはマクロスの「私の彼はパイロット」「残酷な天使のテーゼ」にも似ている。多くの人が知っているが、案外本編を見たやつがいないのだ。
もっとも、アニメ業界でも初回一時間放送という異例なやつをやっているし、影響はもちろん皆無ではない。フリーレーンが完全な後追い(長時間一挙放送、YOASOBIの起用)なのがその証拠だ。
むしろ、発祥の地である漫画界では「数は出たが歴史に残ることもない凡作」であるのが面白い。
そしてなにより、最も影響を与えたのはアイドル界だ。
アイドル界に、「アイドルの妊娠はセールスポイント」「若くして孕んだシングルマザーアイドルはセールスポイント」というもはや明治維新レベルの革命を引き起こしたことはとんでもない影響だ。
実際、孕んだことを現役中に公言したり、二児の母だと自分から言い始めるアイドルが出てきた。
母親アイドルはもはや炎上でなく、売りになった。
これはアグネスラムが「巨乳は隠すものではなく、セールスポイント」という革命をアイドル界にもたらしたのに匹敵する。