憂邦烈士連合会@ソロプレイ

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【個人的ラブコメ久々のヒット】僕の心のヤバイやつ

 高木さんも悪くはないが、とらドラ以来、これといったヒットのラブコメ作品がなかった。いや小ヒットはあった。ホームランがなかった。本作「僕の心のヤバイやつ」は本塁打で間違いなし、である。

 さすが名誉男子桜井のりおである。

 アニメは毎週楽しみすぎて、困る。
 なにせ櫻井氏の特徴的な絵柄に対し、一般受けしやすい調整がなされている点が大変よい。
 少々、氏の絵柄はくどく、人を選ぶのだ。とはいえ、氏のテイストが消えているわけではなく、絶妙の一言である。



 本作の素晴らしいところは、まず設定の妙にある。

 中学生なので、なんでこうしないんだよ! という非論理な行動も納得できてしまうし、ディスコミであっても、それはそれでうぶな姿と好ましく映り、明らかに相思相愛でも前進できない二人の関係さえ、初恋なんだろうし、子どもだし、致し方なし、と思える。
 ライバルはいなくていいし、衝撃的な事件もなくていい。周りはいい人ばかりでもいいし、すれ違いもなくていい。

 これは中学生という設定でしかありえない
 高木さんも中学生だが、これが高校生になるともう大人じみてしまい、ラブストーリーになってしまう。中学生だからこそ、「」の話足り得る

 なので、相思相愛がはっきりしていても、物語は続く。恋物語である。

 次に、激論になりうる「なぜヒロインが主人公に惹かれるのか問題」についても解決されている。
 主人公市川はいわゆる勘違いされやすいタイプである。ちゃんと自覚もしている。しかし、いいやつである。それに最初に気づいたのが山田である。

 山田は「大人だ」と市川にいわれているようにすでにモデルとして働いている。
 仕事には真摯で一生懸命だが、反面、私生活では天然なところがあり、感性がちょっとズレている。小学生みたいな「子供」の面も多い。

 山田はちぐはぐなキャラクタとして造形されていて、それゆえに彼女が市川に魅力を感じるのも納得できてしまう。
 なぜなら、山田は「普通の感性」を持っている子ではなくて、「少し変わった感性」を持っている子だから、チビでイケメンでなくても、市川に惹かれるのだ。

 もちろん、少し変わっているだけで、常識のある子である。
 だから、市川の優しいところが好きなのだ、とは思う。
 ただ、山田は市川の外見を気にしていない。気にしないのは、彼女が変わった子だから、そして、中学生という時代だから、それで終わる。
 ゆえに、「なぜヒロインが主人公に惹かれるのか問題」は本作では議論する意味がない

 なので、本作はただニヤニヤして楽しむことができる。
 ひっかかるところがない。
 登場人物の中学生たちは等身大に描かれている。三者面談で親も出てくる。本作では市川の家族がきちんと描かれている私は主人公と家族をきちんと描く作品を評価している

 そうすることで、市川は中二病ぶってはいるが、家族からはちゃんと愛されていることがわかるのだ。

 これは「ぼっちざろっく」もそうで、ひとりちゃんは家族に愛されていることがわかる。
 特に父親は彼女の才能を認めているし、変わり者の娘を肯定しているように見えた(逆に母親は娘の苦悩が見えていないように感じたが)。まあ、ロックの好きな父親っぽいので、ロッカーな娘に期待しているのかもしれないが。

 大学生ならまだしも、(ラノベではよくあった設定なのだが)中高生の恋愛で家族を書かないのは片手落ちというか、主役たちの背景が見えず、その人物に感情移入しづらい
 恋愛はいずれ家族になるかもしれないものたちの物語である。背景は大事だ。