いま、世界の半導体はTSMC頼みである。
そしてこれは「エッセンシャル」な仕事をないがしろにしてきたツケだ。
ファブなんて金食うだけだしと馬鹿にして、ファブレスファブレスと製造部門を切り続けてきた結果、最新の設計の半導体を製造できる企業がTSMCしかないという事態になった。
インテルがAMDに負けているのも、設計や技術の話じゃない。AMDはTSMCに製造してもらっているが、インテルは自社製造で、インテルのファブがTSMC以下というだけにすぎない。
こういうと、インテルはファブを捨てなかった馬鹿、と言われるのだろう。しかし、TSMC頼みの現状を見ると、むしろインテルは正しかった。自社ファブを持っているのは実は今後有利になる。
というのも、半導体は急に工場を作って製造できるようなものではない。一朝一夕ではどうにもならない。
TSMCの立場は、最早ファブレス企業よりも上だ。TSMCがイヤといえば、どんな素晴らしい設計でも、最新技術で製造できないんだから(二番手のサムスンに頼んでもいいが、最新ではない)。
ブルシット(設計しかできない企業)が増えすぎた。世界的に「製造」を馬鹿にしてきた結果だ。
日本企業も投資を怠ってきたので、もう半導体の最新鋭に噛むことは無理だ。まあ、30兆円くらい注ぎ込めば追付けるかもしれないが、そんな金はどこにもない。だから、TSMCに頭を下げて、日本の工場をつくってもらうのだ。
政府が巨額の補助金を出すのは、結局、日本の半導体メーカーはどいつもこいつも自社で製造できないやつばっかになってしまっているからだ。台湾に媚びを売っているとネトウヨがいいそうだが、そうじゃない。むしろ、日本企業が政府になきついて出してもらっていると考えるべきだ。
旭化成の工場でさえ、どいつもこいつも自社で製造せず他人任せにした結果、かなりの半導体が不足した。それが世界のTSMCだ。規模が違う。
別にTSMCは日本に工場なんてつくらなくていいんだ。立場はあっちが上なのだ。製造業務を設計の下流とみてきた結果、こんなことになった。
TSMCはまさに職人のような企業だ。というのも、半導体の露光装置も自社で作っているわけではないのだ。
日本やヨーロッパ製の露光装置をつかって、世界最先端の半導体を製造している。まさに職人だ。「つくること」だけができる会社なのだ。「ものづくり」とはこういうことだろう。