人類と文字

 人類最古の文書は宗教文書でも物語でもなく、会計管理簿と借用書である。


 世界で最初に文字を発明したのはシュメール人だが、何を記載したかと言うと、だれだれから羊を借りた。貸した。今年は、麦がこれこれだけ採れた。これこれだけ来年の種まきに使う、麦30束と羊を交換した。というような記録だ。

 印鑑もシュメール人が考案したが、利用法は現代と同じ。文書の証明である。


 借りた数の羊の人形を粘土につめ、固める。そこに、貸したやつと借りたやつは印鑑を打つ。これが借用書である。

 羊を返したら、粘土を割って、中身を破棄する。
 つまり、羊や麦の数を管理する会計管理簿、借用書から文字は始まったのだ。


 すでにシュメールの時点で書記がおり、エリートであった。

 書記になれば貴族でなくても豊かな生活が送れるので、親たちは子を書記にしたがった。書記の学校があり、多くの生徒がいた。

 なにせ、書記は会計管理簿と借用書を扱えるのだ。現代で言えば、会計士や行政書士、弁護士なんかの仕事をしているようなものだ。
 宗教文書が記載されるようになるのは、絵文字時代が終わってからだ。


 もちろん、宗教がなかったわけではない。宗教はシュメールよりも5000年さかのぼり、ギョベクリテベの時代までいける。しかし、宗教文書は明文化する必要はなかった。


 人類にとって、重要なことは「誰に何をどんだけ貸したのか」だったのである。そのために絵文字は考案されたのだ。

 だから、絵文字にはそれがマヤ文字にせよ漢字のせよ、すでに文字になった時点で、必ず数詞が含まれている。