西洋由来のもので世界を完全に支配し得たのは分類学と音楽のふたつだけで、それ以外は案外支配はいまいちである。
たとえば建築において、新築でも畳間と床の間はなかなか消失せず、アメリカ的な建築様式になってしまった昨今でも、床の間という謎空間はいつまでも存続している。
オペラやミュージカルはまあ人気があるが、歌舞伎人気も根強い。
スポーツも、柔道は逆にフランスの国技みたいになってしまった。
文字はローカルの文字が強く、アラビア文字や漢字をローマンアルファベットが滅ぼすのは無理筋だ。今後も滅ぶことはないだろう。
料理や宗教も無理だろう。
西洋料理はあまりうけていない地域の方が多く(高級料理はだいたい西洋料理だが日常的には食さない)、日本風にローカライズされたもの(肉じゃががいい例だろう。醤油をぶっ込んだ時点で日本料理になってしまった)も数知れず。
しかし、音楽と分類学は西洋支配が完全に及んだ希有な例だ。
いまどき好んで雅楽を聴くやつはいない。あれはもうゾンビである。
世界的にそうだ。
演歌がそもそも西洋音階であるように、世界中の音楽は西洋音階に支配されてしまった。
まあ、もっともこの西洋音階がどこからきたかというとアラブ音楽なんだけども。マーチングもオスマン帝国の軍楽隊が由来である。弦楽器などは明らかに遊牧民の楽器の系譜にある。
とはいえ、これらを体系的にまとめたのは西洋人だけだ。
アラブ人でもいないことはなかったが、アラブ世界以外では音楽の数式化は進まなかった。
続いて分類学だが、これは絶対にラテン語でなければならないので、医学用語(ラテン語から英語に置き換えが進んでいるように、言語の入れ替えが可能)と違い西洋支配が完全に及んだといえる。
日本語で学名をつけることができないのだ。
これは今後もずっとそうだろう。